<< 本がもっともっと読みたくなる本... 眼力対決 >>
インド「スラム街ツアー」 Yes or No ?
思い出したように、インドの話の続きを。今回はちょっと長めのテキストですが、お付合い頂ければ・・・・

-------------------------------------------------------

ムンバイで最高の頭が仕上がったこの日、実はこのホテルとは対照的なムンバイのもうひとつの顔を訪ねた。

インド金融の中心都市ムンバイは、同時にインド最大のスラムを抱える街でもあるのだ。
ムンバイの人口の約54%はスラムに居住しているというデータもある。
映画「スラムドッグ$ミリオネア」の主人公が生まれ育ったスラムとして有名になったのがムンバイ中心部のダーラーヴィー地区。アジアでも最大級のスラム街で、100万人以上の住民がここに暮らしていると言われている。

日本を出発する前に、スラム街活性化のためにスタディツアーを実施している組織と連絡を取った。NPOではなく、会社組織。ツアー売上の80%をスラムの教育や医療のための資金に活用し、しかも立派に企業としての利益も上げているという。

一方でスラム街を観光に利用しているという批判もある。観光バスの窓から見下ろすのと同じ感覚でスラムの人々の「貧しさぶり」をのぞくというのは悪趣味、偽善なのではないか・・・・・。

日本でも、東北の被災地観光の是非が話題になった。
旅は、過剰に演出されたその土地「らしさ」ではなく、その場所固有の現実を見ることにこそ意味があり、学びがある、と私は考える。
震災被害の現場への旅も同じように、そこを訪れる意志のある人は、臆せず行って見ること。それが大事なことで、何かが変わる始まりになるのだと思う。

a0003150_21211568.jpg


ツアーの集合地に指定されたチャーチゲート駅の本屋前に集まった10人ほどの参加者は、アジアで長期にボランティアをしたり、辺境医療に関心のある医師だったり、インドの学校で英語を教える英国人だったり、それなりに高い意識や関心を持った人が多かった。
たとえのぞき見気分で参加したとしても、きっとその人の中で何かが変わる、そんなちょっとヘビーでディープなツアーだった。

集合地から電車で移動すること30分。マヒム駅で下車すると、線路を渡る陸橋から広大なスラムが広がるのが見渡せる。5人ずつのグループに分かれ、ガイドが一人ずつついて、スラム内部を2時間半掛けて歩くツアーが始まる。
(ここから先は写真撮影禁止なので、主催者のホームページから写真を転載しています)

a0003150_2153576.jpg


無秩序に広がる低層のコンクリートの箱のような建物群。いくら広大だとは言っても、ここに100万人が住んでいるとはとても想像できない。

内部は雑然としているようでいて、実は工場エリア、住居エリア、商業エリアと、それぞれ機能別に別れ、密集度とQOLを別にすれば、一般の都市と構造的には変わらない。
問題はその密集度と生活環境だ。

ロンリープラネットでもこの地区のことは紹介されており、「電気も水道も通っており、驚くほど普通だ」と書かれているが、とんでもない。多分正規の電気メーターを通していない盗電ケーブルが頭上を蜘蛛の巣のように行き交い、地面には剥き出しの水道管が無造作に何本も走っている。これをみるだけでも無政府状態であることが想像できる。

a0003150_1923999.jpg


狭い路地を挟んでぎっしりと並ぶ工場は、ほとんどがリサイクル産業の最終工程を担当する仕事の作業場ばかり。
つまり都市がはき出す膨大なゴミが運び込まれ、すべて人手によって「資源」に生まれ変わらせる作業が行われているのだ。

最初に訪れたプラスチック・リサイクル工場では、素手で様々な家電製品から金属とプラスチックをより分け、プラスチックを細かいチップに砕き、天日干しして再加工品の原料にするるところまでを担当する。

a0003150_194094.jpg

a0003150_1942229.jpg



別な工場では、アルミ部品だけを取り外し、炉で溶かし、金塊のようなカタチに成型する。
高価なアルミの再利用は資源保護には有用だが、最近はアルツハイマーの原因物質ではないかとも言われるものを、換気の充分ではない狭い部屋の中、小さな炉でどろどろに溶かされたアルミの液体を、杓子ですくい、インゴット容器に流し込む。
工場というより、穴蔵。中はうだるような高温と湿度。当然裸での仕事。やけどをしたりアルミ蒸気を吸い込んだりする危険への備えはまったくない。

皮のなめし工場では、羊の生皮が積み上げられ、乾燥させ、薬品につけてプレス機でなめしていく。動物の生臭さと薬品の化学臭が充満し、短い時間でも息をすることが苦しくなる。

ガイドの青年は、ここで作られるリサイクル製品は海外にも輸出されており、資源の有効利用に貢献していることを強調する。

けれど、実態はそんなに美談でもなさそうだ。

厳しい条件のなかで長時間働いた人たちは、同じスラム内の住居エリアに帰る。
ここがまた厳しい環境で、肩幅しかないような路地の奥、陽がほとんど差し込まない6畳ほどの土間で10人近い家族が暮らす。

a0003150_1951051.jpg


スラムの工場も住居も、数人の親分の所有で、工場での賃金から部屋代がしっかり差し引かれ、おまけに商業エリアの店も親分が管理。つまり労働も住まいも日々の買い物もすべて親分に牛耳られるという構造になっているようだ。

a0003150_1955427.jpg


とはいっても、住人たちの表情は思いがけず明るい。
薄暗く熱気と湿気に包まれた作業場をのぞく我々にも明るく笑顔で手を挙げてくれる。井戸で洗濯をするおばちゃんも、片足をなくした車いすの青年も、快活な表情を向けてくれる。
極貧の田舎で食い詰めたあげくにここにたどり着いた人も多く、田舎での暮らしに比べれば、「喰える仕事」があるここでの暮らしはずっと良いのかもしれないし、厳格なカースト制度に縛られて職業の自由もない田舎から見れば、努力次第で手に職をつけることのできるここは解放区ともいえるのかも知れない。

大量消費社会で我々が使い捨てしたもののどん詰まりと、貧困とカーストから脱出したかったひとのどん詰まりがここで出会い、リサイクルという美談で見事にまとめ上げられている。

見るところも多く、歩く距離も長い。ゴミが散乱し足下の注意が必要、っと、かなり疲れる2時間半のツアーだった。
おそらくツアー料金のいくらかは親分や地元マフィアにも渡るのだろうし、住民のためにどれだけ役立つのかは分からない。
しかし、スラムの存在と自分たちの暮らしがこんなにもつながり、自分たちもスラムを生み出すことに荷担する側なんだと思いを馳せるひとが少しずつ増えるだけでも、このツアーの存在理由はあるのではないかと思う。

というわけで、私はこのツアーへの参加を是とします。


Reality Tours and Travel (ツアー主催者)
1/26, akber house,nowroji fardonji rd,
opp laxmi vilas hotel,colaba,mumbai,400 039
Email: info@realitytours andtravel.com

ツアー料金 2.5h short tour R500(日本円で800円位。インドの物価ではかなり高い)
[PR]
by shonanvil | 2012-02-13 23:36 | じゃらん日記NEW
<< 本がもっともっと読みたくなる本... 眼力対決 >>