震災から3ヶ月経った6月なかば。
東北平泉へ旅したときに、見つけた句碑。
中尊寺山内を少し上がったところにある、白山神社能舞台前の竹林に、ぽつりとそれはあった。
「人も旅人 われも旅人 春惜しむ」
東北出身の歌人 山口青頓の作。
経済発展への驕り高ぶりを見事に打ち砕いた、巨大地震と原発事故。
神の怒りを目に焼き付けたいと訪れた東北で、木漏れ日に浮かんだその詩は、運命に翻弄されながらも、温かい春の陽差しを待ち望んでいる東北のひとの、ねばり腰と懐の深さを感じさせた。
旅に出、やがてふるさとに帰る旅人にとって、帰るべき家の大切さはひとしおだ。
家を失った無念と、それでも土地を離れたくない想い。
世界遺産指定で話題になり、放射線量でもホットスポットとなってしまった奥州平泉で、惜春の詩に出会ったことの意味を、しばらく噛みしめてみたい。